2006/5/21(日 )  晴れ

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千葉県 某所

次に向かったのは昨年11月3日に見つけた、谷津田と休耕田がグラデーションのように変化してゆく魅力的な場所だ。カブト・クワガタの採集のための樹はほとんど見つけていないが、変化の多い多様な環境があるだけに、この季節、どんな生き物たちが姿をみせてくれるのかを楽しみにしていた。
荒れた国道沿いの放棄田から続く農道を、谷津の奥へ向かって歩き始めた。
キタテハ コミスジ
昆虫たちの少ない早春に眼を楽しませてくれたキタテハの越冬個体。ボロボロになった翅が痛々しい。 こちらは初夏になると雑木林に続く山道で良く見かけるコミスジ。もう彼らの季節がやってきたんだぁ。。。
ヒメキマダラセセリの求愛 ジャコウアゲハ
ヒメキマダラセセリの求愛? ♂と思しき個体が下からそ〜っと近づいて。。。さて、首尾はいかに?(^^ゞ 黒いチョウの同定は苦手だが、こちらは胴体(腹部)の赤い模様が決め手になって、ジャコウアゲハと判明
アサギマダラ(千葉) アサギマダラ(千葉)
驚いたのは、ヒメジョオンで吸蜜するアサギマダラを確認したこと。長距離の渡りをする蝶として有名だが、付近で繁殖したものなのか、北上の途中に立ち寄ったものなのか。。。
ジョウカイボン ジョウカイボン
一見すると花に集まるカミキリの仲間に思えるが、これはジョウカイボン。花などで待ち伏せして捕らえた虫を食すると云う、カミキリよりもホタルに近い仲間だ。えっ?ホタルは肉食じゃない??? いいぇ、ホタル(の幼虫)はカワニナと云う巻貝を食べる、れっきとした肉食です(^^ゞ
カメムシの交尾 マルカメムシ
毎度見かけるカメムシのなおざりな?交尾(^_^;) マルカメムシの集団。近づくだけであの臭いが。。。
オトシブミの仲間の揺籃 ミイデラゴミムシ
クリの葉を器用に折りたたんだオトシブミの仲間の揺籃 地面を足早に過ぎるミイデラゴミムシ。俺は子供の頃こいつを鷲掴みにし、強烈なガスをおみまいされて指先に火傷を負ったことがある。
タツナミソウ タツナミソウ
シソ科の花はどれも良く似ているが、これはこの季節に林道脇で普通に見かけるタツナミソウ。この写真では良くわからないが同じ方向に花が立ち並ぶ様子を「立つ波」になぞらえた名前だそうだ。
草刈の風景 草刈の風景
しばし歩くうちに、田んぼに面した急な斜面の中ほどで作業中のオジさんに出会う。長い棒の先につけた鎌で手際よく草を刈っている。写真を撮らせて欲しいとお願いすると、照れくさそうに笑いながら勇士を見せてくれた(^^) 「よく手入れされた斜面」などと簡単に口にするが、本当に重労働だ。
イボタの繁み シジュウカラの幼鳥
実は今日はここが目的の場所だった。写真ではわからないが、非常に大きなイボタの繁み。5月下旬から6月上旬に白い花を咲かせ、多くの虫たちが集まる。その中に、もしやこのイボタを食草とするウラゴマダラシジミと云うゼフィルス(シジミチョウの仲間)がいるのではないかと期待したのだ。しかし残念。花はまだしばらく先のようで、繁みの中で親鳥を待つ、つぶらな瞳のシジュウカラの幼鳥が可愛らしい姿を見せてくれただけだった。
谷津田の風景 ヒメキマダラセセリ
この場所の、ここから見える風景が俺は好きだ。不定形な田んぼと自家栽培用の小さな畑。何の変哲もない谷津の風景だが、それが人の暮らしのすぐ側にあることが心地よい。。。 傾きかけた日を浴びて、一際オレンジ色が映える美しいヒメキマダラセセリ。長い口吻を持て余すかのようにたわませて蜜を吸っている。
カラスアゲハ カラスアゲハ
この黒いチョウは、カラスアゲハだ。田んぼ脇の草地のそこかしこに咲いているノアザミを盛んに訪れている。身を翻した一瞬、ブルーとグリーンの金属光沢がキラリと輝いた。
ジャコウアゲハ ジャコウアゲハ
こちらはジャコウアゲハ。黒一色の喪服のような装いだが、腹部には毒々しい赤い模様が入る。毒々しいだけでなく、実際に毒を持っている(幼虫が食草としているウマノスズグサの有毒成分を蓄えたもの)。また、麝香と云う名からの連想もあるのだろう、どうしても妖艶な娼婦のイメージを持ってしまう(^_^;) 
そんなこんなで、どちらかと云えばあまり好きなタイプではないチョウだ (^^ゞ
ダイミョウセセリ 羽化不全のヒメキマダラセセリ
なんとなく折り紙で作った「やっこさん」を思い起こさせる体型?だが、これを紋付の裃(かみしも)をつけた姿に見立てて名付けられた「ダイミョウセセリ」 羽化不全を起こしたヒメキマダラセセリ。痛々しい姿だが、自然の中では誰も助けてはくれないのだ。
ガを捕らえたハナグモ ハナグモの捕食
不自然な恰好でハルジオンに止まっている蛾(キスジホソマダラ)を見つけてよく観察すると。。。ハナグモに捕らえられて絶命したものだった。昔懐かしい火星人がせせら笑っているような腹部の模様が憎々しい?(^^)
ヤマトシリアゲ
こちらは吸血の貴公子?ヤマトシリアゲ。秋に見掛ける飴色の個体に比べて、少々シックな装いだ。 ちょっと調べるのが面倒なので、セセリチョウの仲間の幼虫か?、としておこう。。。(^_^;)
谷津のため池? キショウブ
谷津の奥に控えていた自然度の高いため池??ではなく、どうやら放棄された水田に湧水がたまっている場所のようだ。由来はどうあれ、アシが繁り、キショウブが咲くこの場所は、多様な環境のひとつとして大切な役割を担っているのだろう。
ヒガシカワトンボ 透明型 ヒガシカワトンボ 透明型
その脇の薄暗い林で、捕らえた肉団子を食べていたトンボの仲間。はっきりとした写真が撮れなかったので定かではないが、通常見掛けるイトトンボよりも一回り大きくがっしりしていること、翅の縁紋が赤いことからヒガシカワトンボの透明型♂と判断した。
ウスタビガの幼虫 ウスタビガの繭
コナラを食べるウスタビガの幼虫。ちなみに右の写真は、今年の3月5日に別の場所で見かけたウスタビガの繭。特徴的な色と形をしているので、冬枯れの季節の散策ではよく見かけることができる。
久しぶりの好天の下、実に楽しい時間を過ごすことができた。冬枯れの中からさまざまな植物が芽を吹き、花開いて景色を優しい色に染めていた4月中旬からわずかひと月余りで、一気に昆虫たちの姿が増えている。盛夏に向けて、これから更に色々な生き物たちが命のきらめきを見せてくれるのだろう。新たに始まった歳時記も、夏へとページがめくられた。シーズン到来。今年も沢山の魅力的な生き物との出会いを綴って行きたいものだ。

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