2005/8/27(土)  晴れ (その2)

台風11号の爪痕はそれほど大きく残されてはいないようだが、水路を始めとした谷津田周辺の生き物たちにとって、過酷な環境変化が生じているのは間違いない。
動物・植物を問わず、少し丹念に周囲の生き物たちに目を凝らしてみよう。。。

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谷津の最奥部、谷頭(こくとう)でまず目を惹いたのがタマアジサイの美しい花姿だ。谷頭は周囲の台地や山の斜面から搾り出される根垂水(ねだれ)と呼ばれる湧水によって常に湿り、また周囲が薄暗いためにこうした陰性の植物を目にすることが多い。球形の大きな蕾(総苞)から開く薄紫の両性花(花の中央の細かなシベのある部分)と白い装飾花(4つの花弁)は、夏の終わりを彩る打ち上げ花火のように美しい。
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よく草刈りされた日当たりの良い畦の土手には、ネギの仲間のツルボが淡い紅紫色の花を咲かせている。
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こちらは、ハギにも似た雰囲気を持つ、同じマメ科のコマツナギ。春に咲くカラスノエンドウなどと同様に鳥の羽のような羽状複葉を持つ繊細な植物だが、れっきとした木本(樹)のひとつだ。
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露出オーバーで少し見づらいが、こちらがハギの一種マルバハギ。ハギの仲間の葉は、3枚で一組になった3出複葉だ。葉先が少し凹んでいることと、花の柄が葉より短く寸詰まったことから他のハギとの区別は容易に出来る。秋になる頃には、見事に花が咲きそろうのだろう。
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これまた里山(の日陰)で良く見かけるキブシ(木五倍子)。春に透明感のある黄色い房状の花穂を垂らす、独特の雰囲気と存在感を持つ樹だ(右の写真は2005/4/23撮影の花序)。
左の写真に写っている実に、タンニンを含むことから『ブシ』の名を持つと云うのは上述の通り。
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秋に真っ赤な実を楽しませてくれるガマズミの実の一部が、白い短毛で覆われて変形している。これも虫えいのひとつでガマズミミケフシ。ガマズミミケフシタマバエと云う寄生バエによって形成される。
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谷津田の土手のどこででも見掛けるアキノタムラソウ(実際にはもう少し紫色)。チョウが頻繁に訪れる。学名は「日本のサルビア」の意だそうだ。 倒れたイネの横で可憐に咲いていたオモダカ。おせち料理で使うクワイは、このオモダカの変種だ。
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里山の斜面を覆う嫌われ者のクズだが、花は意外にも品良く可愛らしい。
 、と撮影していると小さなチョウが素早く飛び立ちヤマグワの高い枝先に止まった。表が褐色のビロードに茜色の模様、裏が白銀色と云う美しいコントラストの翅を持つウラギンシジミだ。幼虫はクズの花や蕾を食べると云う変り種で、この時期に産み付けられた卵が秋までに成虫になり、成虫のまま冬を越すと云う。(写真は♂)
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初見のウラギンシジミを夢中で見上げていると、目の前の葉裏に何やら宇宙人じみたクモが。。。
これも初めて見た!オオトリノフンダマシ
こちらは見慣れたナガコガネグモ。トリノフンダマシも同じコガネグモ科だと聞かされても、俄かには信じがたい。
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また変なクモが出てきた。。。(^_^;)  こんな風に足を広げて構えるクモはハナグモを始めとしたカニグモの仲間だと思うが。。。答えはアズチグモ。色彩や斑紋のあるなしなど変化が大きいらしいが、ここまで全身が純白とは驚かされる。足の透明感といい、虫好きならずとも、誰もが「美しい」と思うのではないだろうか?
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050827_007.jpg (29644 バイト) ヤブマオ(イラクサ科)の繁みに足を踏み入れると、人差し指ほどもある毒々しい色彩のケムシがあたり一面で宙吊りになって体を激しく揺すって威嚇してきた。

その数、おそらく50頭以上(@_@;) 大概の気色悪い生き物たちに全く動じない俺も、さすがに足が止まった(^_^;)

これはフクラスズメと云う夜の樹液酒場ではおなじみのガの幼虫だ。

見ているうちに、ちょっと可愛くなってきた(^^ゞ
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まるで違う種類のトンボのように見えるが、どちらも同じノシメトンボ。羽の先端が褐色になるのが大きな特徴のひとつ。右は胸まで鮮やかな赤に染まっていることから、コノシメトンボかとも考えたが、胸の黒条の模様がどちらの個体も全く同じで、ノシメトンボの特徴と一致している。
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水田から離れた暗い林縁にいたために手ブレがひどいが、この赤トンボはヒメアカネ。アカトンボ中でも小さくて可愛らしい。 夏の名残か、オニヤンマ。
などとセンチに云ってみたけれど、実際には10月下旬まで、びゅんびゅん飛んでいたりする(^_^;)
050827_271t.jpg (29662 バイト) 一部の水路は、無傷のまま残っているようだ。その中に全身のイボにちょっとドキドキしてしまう(^_^;) ツチガエルの姿が。

ツチガエルはオタマジャクシのまま冬を越す。したがって早春に産卵するアカガエルと同じように、この谷津田のように冬も水の残る湿田でしか繁殖することが出来ないのだ。

水田の乾田化が進む今、ニホンアカガエルやアカハライモリとともに千葉県のレッドデータブックのA類(最重要保護生物)に挙げられている。
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おそらく、どちらも見分けがつかないと思うが、背中の2本の線に注目。目の後から同じ幅で平行に伸びている左はニホンアカガエル。目の後の鼓膜部分で線が広がっている右の個体はヤマアカガエルだ。
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心配した水中の生き物たちの様子だが、わずかな面積の暗渠に大量のホトケドジョウを発見。タイコウチ幼虫の姿も見られた。また、写真に残すことは出来なかったが、深まった部分では空気を吸いに水面に上がってきたイモリも確認することが出来た。したたかに、どうかしたたかに、いつまでも生き抜いて欲しいと願わずにはいられない。

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暑い日が続いてはいるが、生き物たちは確実に秋の装いを始めている。
この谷津田が秋を迎えたとき、一体どんな彩りを見せてくれるのだろうか?

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