2006/8/25(水)  曇り

子供たちの夏休みも終盤を迎え、今年もカブクワシーズンがほぼ終わりを告げた。本来なら7・8月は比較的仕事が閑散となり、睡眠時間と体力が許す限り雑木林をウロつく算段をしているのだが(^_^;)、今年は全くといっていいほど身動きが取れなかった(>_<) まぁ長い会社生活の中、こんな1年もたまには?あるだろう。
一緒に仕事をしているキムシンも、もちろん多忙を極めた。ヤツもこのまま夏を終われない気持ちでいるのは俺と同じはずだ。今夜は2人でうまく段取りを合わせ、ひっさしぶりにフィールドに向かうことにした。

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キムシンと2人となれば、向かう先はやはり『天竺』だ!
そうそう、以前から「フィールドノートに出てくる『天竺』って何ですか?」と尋ねられることがあった(^_^;) 『天竺(てんじく)』は、俺が2005年の2月に偶然見つけ、今最も大切にしている千葉の某フィールドのことで、もちろん具体的な地名ではない。西遊記で三蔵法師一行が目指した理想郷、あのガンダーラから名を借りている。俺のフィールドノートは極めて自己満足的な面が多いので、理解不能なことが多いかもしれないが、寛容な心でご宥恕いただだきたい。。。です。。(^o^;)

天竺

、と云うことで、「目にはさやかに見えねども、」 かすかに秋の気配が感じられるようになった天竺への道をひた走った。夜間の冷気を楽しもうと車の窓を開けると、風の音ならぬ虫の音に驚かされた。走り続ける道全体から、延々と「ガチャガチャ」とやかましい声が聞こえているのだ。日中の気温はまだすさまじいものがあるが、ほぅら、やはり秋はそこまで来ているんだ。
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声の主、(褐色型の)クツワムシ。大声量を頼りにじっと眺めていれば、大きな昆虫だからきっと見つかるだろう。動作は遅く、捕まえるのも非常に容易。でも連れて帰ると騒音に悩まされるぞ〜(^^ゞ こちらはセスジツユムシ。だと思う(^^ゞ 草むらを照らすと、色々な秋の虫が増えているのに気付かされた。
さて、今夜は新しく手に入れたデジタル一眼レフの夜間の使い勝手を確かめる目的もあった。レンズにお金をかけられないことから、18−200mmと云う万能型のレンズを1本だけ買ったのだが、さてマクロ撮影はどうだろう。。。
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格好の被写体、ザトウムシを狙ってみた。たまたま動きが緩慢だったためにキムシンに照らしてもらいながらようやくピントを合わせたが、暗闇でのピント合わせは困難を極める。一人で動きの激しい昆虫を撮影するのは難しいだろう。先代のデジカメも夜間の近接撮影には向いていなかった。こうしてみると機能・解像度とも一番劣っている初代の小さなデジカメが、夜の昆虫撮影には一番適しているようだ。こればかりは実際に撮影してみないとわからず、デジカメ選びの難しさを感じさせられる。。。
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以前見つけたトゲナナフシも、もう立派な成虫になっていた。幼虫時代からあまり移動しないようで、毎回同じ場所付近で見ることができる。 ちょっと生っぽい獲物に群がるクロオオアリ(?)。普通見かけるアリのなかでは最大級で、かなり力強い印象だ。
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クヌギはまだ一部に樹液を滲ませており、カブト♂とノコのペアがあまり争うことなく集まっていた。
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また、わずかな隙間にはコクワがひっそりと隠れている。。。最盛期から比べると、本当に寂しく静かな雰囲気だ
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日陰に咲いていたのはヤブラン。葉姿のよく似たジャノヒゲが地味な印象なのとは異なり、こんな美しく立派な花を咲かせる。艶やかな黒い種子をつけた晩秋の姿も見事。 そばではミズヒキが赤い花穂をスラリと伸ばしていた。この花が目立ち始めると、ヤマは次第に秋の色を濃くしてゆく。
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足元に咲くこの繊細な葉と花はアキカラマツ。2〜4回3出複葉と云う特徴的な葉のつき方が、一見するとアジアンタムなどのシダ性の観葉植物を思わせる。優しげでなかなか魅力的な植物だ。 この、端正な十文字の白い花を咲かせるつる性植物は、センニンソウ。「○○カヅラ」などの名前を想像して調べたが大外れ(^_^;) 困った時に良く利用させてもらう『四季の山野草』で、「白い花」「花弁4枚」「つる性」で検索してようやく名前を確認できた。
前述のセンニンソウを「○○カヅラ」と想像してしまった一番大きな理由がこれ。雰囲気のとてもよく似たテイカカズラだ。初夏の里山を濃厚で妖艶な香りに包むつる性の植物。センニンソウよりは花期が2ヶ月以上早く、この時期にはすでに細長い実をつけているはずだ。花を見た記憶を頼りにようやく探し当てたのが下4枚のうちの左下の写真、この20cmもあるインゲンマメのような実の中には純白の冠毛をつけた種子が詰まっている。
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ぐっすり眠っている昆虫たちの姿や。。。
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子孫を残すために夜を徹しているもの(^^)、
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獲物を狙うものなど、昆虫たちの夜の姿は様々だ。
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水田は既に落水され、稲穂は充実し、稔り、頭(こうべ)を垂れているた。 イノブタが荒らした水田、と思しき跡。この辺りは狩猟のために放たれたイノブタが野生化して困っているとのことだ。
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水田周辺の水路では、サワガニやホトケドジョウの姿も見られる。今年は天竺に来る機会がほとんどなかったが、こうしてまだ生き物たちが生き長らえる環境が残っていることが嬉しい。はたして来年はどうなんだろう?
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水田脇の斜面に今年もツルボの群生が確認できた。これも、草刈が行われなくなれば衰退してしまう向日性の植物だ。人の営みを頼りに生きている生き物たちの多くは、農業が放棄されることで姿を消さざるを得ない運命にある。けして希少ではなく、手入れされた里山であればどこでも見られるこれらの植物や昆虫たちが積極的な保護の対象になることはないだろう。山あいの谷津田は遠くない将来次々に放棄され、それぞれが気候条件にそった遷移を遂げて行くはずだ。ありきたりであるが故に、誰の気にも留められることなく消えゆく運命にある彼らの健気な姿を、俺はひとつでも多く紹介してゆきたいと願っている。

2006年フィールドノート
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