2006/8/16(水)  曇り時々雨→晴れ

御殿場在住の自適庵さんとのお付き合いもずいぶん長い気がするが、いったいどれ位になるのだろう?はっきりと記憶に残っているのは2004年10月、会社の慰安旅行で行った伊豆への道中で見かけたクヌギの純林に感動し、「自適庵さんのお話でうかがってはいたが・・・云々」と某掲示板に書き込んだこと。当時はまだ親しく言葉を交わす間柄ではなかったように思うので、逆算すると2年程だろうか?
そう考えてみるとそれ程長い交際(*^^*)?ではないのかもしれない。しかし今の俺にとっては最も気の置けないカブクワ仲間の一人。ミヤマを中心としたクワガタ採集のみならず、全ての生き物たちに愛情深い視線をそそぐ、とても純粋な魂を持った魅力溢れる人だ。
以前から何度も伊豆行きを誘っていただいていたが、ようやく念願かなってお会いする機会を得た。さてさてどんな楽しい時間を過ごすことができるのだろう。。。(^o^)?

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今回、伊豆へ連れて行ってくれたのは、同じ江戸川区在住のミックさん。拙HP、最初のフィールドノート(2005年1月9日)に登場いただいて以来1年半ぶりの再会だ。
渋滞を避けるため、未明と呼ぶにはまだ早すぎる真夜中の東名を一路御殿場へ。自適庵さんの自宅前でマクゴロウさんも合流し、「自適庵さん=初対面 マクゴロウさん・ミックさん=2回目」とは思えない、まるで同窓会のような気分でいよいよ期待の伊豆ポイントへと向かった。

伊豆 某所

途中、怪しかった空模様が崩れ始め、最初のポイントは早朝 雨の中。。。すべったり転んだりの珍道中の始まりだ(^^ゞ
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ちなみに、これが今回同行の、『健康診断の結果が』ちょいワルなオヤジたち。。。?!(^_^;) 少年のようないでたちのミックさん。これでヤブをこぐのだから気合が入っている(^^)
今回案内いただくポイントのいくつかは、雑誌に紹介されるなどして採集者が激増、もはや風前のともし火だと云う。特に人気の高いミヤマの場合、日中の蹴り採集が容易と云うこともあり、ひとたび情報が流れると人が集中する。カブクワ採集を一部のマニアたちだけの特別な趣味にすることにも賛成しかねるが、こういった現状を目の当たりにすると考えさせられることも多い。
昆虫を採集することは、映画を見たりテーマパークへ行くこととは根本的に異なる高揚感がある。それはカブクワと云う獲物をえると云う「結果」ではなく、自然を理解し、生態を知り、その知識を確認する「過程」の中にこそあることを、ぜひとも知ってほしいと思う。
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その「過程」を満喫しているクワ仲間のPさんが昨年自適庵さんたちと見つけ出したと云う新規ポイントは、件の人気スポットからほんのわずかしか離れていない。悪条件の中、ここで早くもミヤマを発見!
知識と経験に基づいて生息地を探し当てる、これこそが採集の醍醐味だといえないだろうか?
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小さな転進を繰り返し、こんなシーンを楽しんでいるうちに雨も上がり、コンデションも気分も盛り上がってきた。 自適庵さんの視線の向こうにも。。。
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こんなシーンが多く見られるようになってきた。俺を含めて多くの人が憧れるこんな場面が、当たり前のように見られることは驚きだ。
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こんな林道沿いの細いクヌギにも目を光らせるお2人さん。ここではスタンダードな採集スタイルなのだろうか?何が落ちてきたのかなぁ??(^^ゞ
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俺にとっては十分かっこいいミヤマだが、伊豆を拠点に活躍する彼らにとっては物足りないサイズらしい。 樹液酒場でお馴染みのホシアシナガヤセバエも、豊かな自然の中、こんなに太っている。(関係ないか?(^^ゞ)
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ここではカナブン・アオカナブン・クロカナブンを同時に見ることができ、その比較も容易だ。これだけ美しいのにあまり話題に上らないのは、やはり数が多いためだろうか。「希少=貴重」ではないと思うのだが。。。
やがて現れたクヌギを主体とした緩斜面は、カブクワの雰囲気のプンプンする有望そうな場所だ。今まで目にしてきた定期的に伐採されている他の林とは様相が異なり、ところどころに古いクヌギも見受けられる。手入れが疎かな分、下草や潅木が多く林床は暗めだが、オオクワがいてもおかしくないとさえ思える。みなが待ちきれず、それぞれの期待を胸に思い思いの方向に散っていった。
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これこれ、埼玉あたりでよく見かける根元の抉れたようなメクレクヌギだ。こんな樹がこの他にも数本まとまって見つかった。今日は若く細く、樹皮がボコボコのクヌギばかりを見てきたが、やはりある程度の樹齢になると、こんなメクレ形状も現れてくるのだろう。こんな樹をみつけると知らず充実感を感じてしまう。
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あいにくカブクワが張りついている姿は見られなかったが。。。 試しに周囲のクヌギを揺すると、ボタボタとミヤマが落ちてきた(^o^)!やはり生息密度はかなり高いようだ。
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この春に芽吹いたばかりの萌芽更新中のクヌギもあれば、樹液の匂いを周囲に振りまく洞クヌギも。。。
!? っと、その時、深いウロの中に一瞬大きな黒い影が翻った。デカイ!一気に心臓が高鳴る。おそらく俺が野外で見る最大級のドルクスだ。このサイズ、この標高、この環境、、、ま、さか、こ、れ、は、、、オ・オ・ク・ヮ〜??
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陣取るスズメバチ君に丁重にお引取り願い、秘密兵器の医療用鉗子(かんし)で一気に引き出すと、現れたのはなんとヒラタだ。辛めに計測しても57mm、これにはビックリ! 確かに伊豆ではミヤマとヒラタが混在していると聞いていたし、今回の伊豆採集の一番の目的もその環境を見ることだった。しかし、正直ヒラタのことは全く念頭になくなっていた。軽々にオオクワなどと想像してしまったのは恥ずかしいが、この環境でこのサイズ、もう一度同じ場面に出会ったとしても、やはりヒラタが頭に浮かぶことはないだろうと思う。。。むしろ、オオクワガタだった方が今よりも驚きは少なかったかもしれない(^_^;)
図らずもミヤマ・ヒラタの同居する環境を目撃し、満足満足(^o^)! 
、と、ここで京都との決定的な違いに気が付いた。確かに関西でもミヤマ・ヒラタが同居する雑木林を見てきたが、あちらが「ヒラタの住む環境にミヤマが同居している」ように思えるのに対して、ここはでは「ミヤマの住む環境にヒラタが同居している」ようなのだ。微妙なものながら、本来の植生がシイ・カシといった常緑広葉樹林なのか、コナラ・ミズナラ・イタヤカエデなど落葉広葉樹林なのかの違いがみえてくる。言い訳がましいが、俺がオオクワと間違えたのも、そんなところに原因があったのだろうと思う。
さて、今日は時間がない。名残り惜しいが、ひとつでも多くのフィールドを見るために先を急ぐことにした。
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こちらには、頭上数メートルにメクレを持つクヌギが数本。埼玉・千葉などで一番多く見かけるタイプのクヌギだ。集まっているのはミヤマ・カナブン3種・コメツキムシなどなど。
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中にはこんな素晴らしい樹も。。。 眺め上げたり、かがんだり、、、
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マクゴロウさんが、蹴る!!

ミックさんも、ける!!!

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そして自適庵さんが、、、拾う!(^o^)

歩いたり、

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覗き込んだり、、、、  楽しい時間が過ぎてゆく。。。(^^)

さてさて、次に向かうはマクゴロウさんお奨めのタブの樹だ。この近くでもどうやら樹液のタブを見つけているらしい。。。
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雑木林の中にある株立ちのタブ。千葉の原生林にある巨大なタブの樹とは少々雰囲気が異なるが、マクゴロウさんの蹴りの一撃で、
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ご覧の通り、ミヤマのペアがポトリ、ポトリ。 
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更にはこのようにノコの姿も見られた。周囲は理想的な雑木林で樹液の滴るクヌギもあることから、樹液がなくて止むを得ず集まってきたとは思えない。むしろタブの樹液に対する嗜好性が高いのだろう。シラカシといい、このタブといい、常緑広葉樹の樹液は派手さはないが、見た目にはわからない底力があるのだろう。
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周辺は、ほぼ100%のクヌギの純林。このように樹液にも発生源にも事欠かない。

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シイタケ栽培のホダ木が並び、きれいに刈りそろえられた明るい林床。まさに教科書通りの、絵に描いたような美しい雑木林の姿だ。ほんの3〜40年程前までは、日本中のいたるところにこんな風景が広がっていたに違いない。人の暮らしに不可欠な炭や薪などの燃料や建築用材、堆肥用の落ち葉、水田の緑肥としての新梢(刈敷)、牛馬の飼料としての下草、食用の山野草やキノコや薬草。。。これらを得るために雑木林に手を加えることそのものが、図らずもこのように美しい雑木林を維持管理することとなり、より多くの動植物たちの命を育んできたと云える。それが何より素晴らしい。人は意識することなしに、単に人として生活するだけで、他の生き物たちの命を守り育てることが可能なのだ。 おそらくカブトムシやクワガタも、そうした人の暮らしに依存することで、今のような繁栄を勝ち得たのだろう。
今まで繰り返し考えたことだが、美しく維持されている雑木林を前にそれを実感しながら、この伊豆の素晴らしいフィールドを後にした。
自適庵さん、マクゴロウさん、ミックさん、本当にありがとうございました。

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