2006/6/6(火 )  くもり

さてさて、本来であればカブクワの話題で持ちきりの時期だが、今年は5月の天候不順のせいか各地とも例年になく出足が遅いようだ。俺自身はフロックともいえる5月中のミヤマ目撃に気を良くしてはいるが、良く考えてみれば未だカブトの影さえ見ていない。もっともっと精力的にカブクワ探しに専念しなければ、こんな拙いサイトを飽きもせずに訪れてくれる方々に申し訳が立たない。。。とも思うのだが(^_^;)、今日は(も?)お目こぼしいただこう。目標は憧れの「ゲンジボタルの乱舞」! もちろん観光地化された場所ではなく、「俺だけのポイント」で!!(^^)v

今日もキムシンに「ホタルの乱舞を見に行くぞ!」と声を掛けたら、嬉しそうに二つ返事でついてきた(^o^) 見られると云う確信はない!(キッパリ) でも自分自信のフィールドを見分ける力を信じたい。感動は誰かと分かち合いたいじゃないか。失望は誰かと笑い飛ばしたいじゃないか。ロマンチックな感動を分かち合うにはキムシンはいかにも役不足だが(^_^;)、まぁこの際贅沢は云うまい。二人、早々に仕事を切り上げて、フィールドに向かうことにした。

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目指す先は、この春の下見の折に見つけた、とある谷津の最奥部だ。かなり深い谷津のため、車を止めてから歩くこと30分近く掛かる。農作業のための細い農道が続いてはいるが、道幅は2m弱、片側は急な上り斜面林で、もう片側は1〜3m程の崖下に水田が広がっている。軽トラ専用のこの曲がりくねった道の路肩がオデッセイの車重に耐えられる保証はどこにもない。足元さえおぼつかない闇夜の中で無茶をして、万が一田んぼに転げ落ちでもしたら・・・(>_<) 時間は惜しいが、やはり歩いて向かうしかないだろう。

千葉県 某所

ホタルポイントに行く途中、先日ミヤマを見つけたクヌギにも立ち寄って見ることにした。2匹目のドジョウがそうそういるとは思われないが。。。
コクワガタ
滲み出る樹液にミヤマがついていた場所には、アカマダラケシキスイ?とやらが無数に貼り付いていた。ヨツボシケシキスイよりも光に敏感なようで、ライトを当てると一斉に霧散してゆく。背中が痒くなるようなケシキだ(^^ゞ 蛾や小さなケシキスイやらに席を譲ったのか追い出されたのか。。。?推定40mmのコクワが樹の根元で寂しそうにしていた。この周辺では、まだ本格的なカブクワシーズンには早いのかも知れない。
060606_018.jpg (30221 バイト) オオスズメバチ
こちらは直径15mmほどの穴から流れ始めた樹液。掻き出し棒で探ると奥は意外と深く、中からドロドロの樹液の滓が出てきた。甘酸っぱい発酵臭が漂う。。。今後の活躍に期待だ(^^) 頭上ではオオスズメバチが音を立てて樹皮をガジガジしている。こうやって、わずかな樹液の滲みを大きくしているようだ。それぞれの生き物たちが、それぞれの方法で生きる糧をえようとしている。
ヘビトンボ コクワガタ キマダラミヤマカミキリ ヘビトンボ
こちらは少し離れた場所にある数本のクヌギ。俺にしては珍しく、どうも好きになれないヘビトンボがどの滲みにも1匹ずつ貼り付いていた。離れた眼、噛まれたらいかにも痛そうな大きな牙を持つ爬虫類じみた顔で睨まれると、何とも嫌な気分になる。幼虫は渓流に住む川虫のひとつで、ミヤマを狙うポイントでは大抵1匹や2匹見かけるヤツだ。
ヘビトンボ コクワガタ キマダラミヤマカミキリ ムネアカオオアリ
こちらにも大量のアカマダラケシキスイ?とムネアカオオアリ。スマートなキマダラミヤマカミキリが争うように樹液をすすっていた。

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そうこうしながら、いつもより少し足早に谷津の奥に向かった。ゲンジボタルが多く飛翔するのは、20時頃と01時頃の2回だと聞いたことがある。ウロウロしているうちにもう22時。とうにピークは過ぎてしまっているのだ。。。いつもなら田んぼの中や道端やらに気をとられながらの散策だが、今日は一目散に目的地へ進んだ。それにしてもただ歩くだけだといつも以上に遠い。。。(^_^;) たっぷり30分かけてようやく谷津の最奥部にたどりついた。

果たして!! 飛んでいる!光ってる!「乱舞」と呼ぶには少々寂しいが、それでも天竺の数倍はいるだろう。何より、その多くが田んぼ脇の狭い水路付近に集まっているため、実際の数よりもずっと多く感じる。密度が高いのだ!これなら飛び交う光の軌跡を撮影できるはずだ!!!??エッ!?(@_@;)。。。!?ま、さか。。。(~_~;) な、んと、、、(>_<) フィルムを車に置いてきた〜〜〜ぁ!/(ToT)\

ホタルの撮影には、丈夫な三脚と、数分間の長時間露光が可能なカメラが必須だ。普段使っているコンパクトデジカメにこの機能はない。最近すっかり手にしていなかったフィルム一眼レフカメラと三脚を、重い思いをして(キムシンが(^_^;))運んできたのにぃ〜(T_T) 

一瞬の躊躇もなく、車までとって返すことにした。生き物たちとの出会いは一期一会だ。今日のこの瞬間を逃したら、今シーズンはもうこれだけの飛翔を見ることは出来ないかも知れない。
往復1時間、曇天を月が照らす薄明るい空以外は全くの闇夜。まして何が出るかも知れぬこんな場所にキムシン一人を残してゆくことに気も退けたが、ヤツはヤツなりにこの「ホタルの夕べ」(^_^;) を楽しんでいるようだ。自ら『あかんたれ』を標榜するキムシンが、凛々しく「待ってます」 と云ってくれた。

「よし!じゃ、行ってくる。歩いたりしないよ。息が途切れても走り続ける。必ず戻ってくるから待っていてくれ!」と、云ったかどうかは忘れたが、メロスは闇夜に向かって走り始めた。。。(^_^;)

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そして40分後、俺の照らす青白い光が闇夜に浮かぶキムシンを映し出した。ほとばしる友情と感動が俺の心を熱くした。そう、俺は帰ってきたんだ。俺を信じて暗闇の中で一人待ち続けたキムシンの元へ、低いエンジン音を響かせ、ガンガンに冷房を効かせた愛車に乗って。。。(^^ゞ 

許せよ、キムシン。メロスはもう40を2つも超えているんだ。。。<m(__)m>

、とまぁ、前置きが長くなったが、そんな苦労と感動の末に撮影した写真のいくつかを披露しよう。一部は昼間のように明るく見えるが、これは露光時間が長すぎたため。デジカメと違って現像するまで結果のわからないフィルムカメラの場合は、色々と撮影条件を変えて試してみる必要がある。いくつかはイメージにかなり近い写真を残すことが出来たが、思わぬ事故に巻き込まれて?時間を取られたことが災いし、時刻が遅すぎたせいだろう、多くは樹の葉陰にとまったまま飛翔せずに「乱舞」とは程遠いものとなってしまった。
ゲンジボタルの光軌 ゲンジボタルの光軌
ゲンジボタルの光軌 ゲンジボタルの光軌
ゲンジボタルの光軌 ゲンジボタルの光軌
谷津の清流 サワガニ
ちなみに水路の水は、ご覧の通り限りなく透明に近いブルー(By村上龍)だ。 あえて水流が不規則で波立つ場所を選んで撮影したため、水の存在がかろうじて判るだろう。 (いつものデジカメで撮影)
ゲンジボタル ゲンジボタル
水路際のミズゴケの上には、無数のペアが愛を語り合っている。可能であれば産卵シーンを見たいとずいぶんと時間をかけて探したが、ついにその願いは叶えられなかった。
ゲンジボタル ゲンジボタルの住む谷津田
左の小柄な個体がオス、右がメス。 斜面下のこの小さな水路こそが、清らかな水が澱むことなく流れ、数多くのカワニナが生息し、ミズゴケで覆われる、ホタルの命を支える揺りかごなのだ。

ゲンジボタルの乱舞

山あいの小さな森に囲まれた静かな棚田が、薄っすらと優しげな霧に覆われている。
ふと風がそよぐと、霧の切れ間から恐いくらいに暗く蒼い満点の星空が顔を覗かせる。
見下ろすと、青さを増した早苗に付いた水滴が星空と同じようにキラキラ輝いて。。。

沢山いるわけじゃない。でも、目を凝らすとそこかしこに青白い光が揺れている。

光を交わして近付きあい、そっと葉陰にかくれる二つの光。
風に煽られて空に舞うもの。
はぐれて少し悲しげに、でも精一杯の光を放つもの。
周囲に響くアオガエルたちの恋のささやき、山すそに散った白いウツギの花弁。

ひとつの弱々しげな光が俺たちの元に近付き、戯れに伸ばした俺の指先に止まる。
ハッとして嬉しげに目を輝かせたあなたがそれを見つめている。

恋を語らぬ、この小さな命が放つのは、
けして熱を帯びることを許されない冷たい燐光だということを、
あなたは知っているのだろうか。

あなたが白くしなやかな指先を伸ばしたのは、それを手にしようと望んだため?
ためらいながら、あなたの指先が俺の光に触れようとしたその刹那、
淡い光は空に逃げる。

あなたの瞳が一瞬見せた哀しみの色。しばし眼で追い、やがて視線を俺に投げかける。
美しく静かな、限りなく優しい、あなたの微笑み。。。

俺はそれには応えず、逃げゆく青い光の軌跡を探そうと
目の前に広がる闇の海に眼をやった。

ホラね、キムシン。隣にいるべきは、お前じゃない (^^ゞ

2006年フィールドノート
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