2005/9/18(日)  晴れ

香川県に住むタケちゃんが、愛車ジムニーに乗ってやって来ると云う。タケちゃんは自然をこよなく愛するナイスガイ?で、昨年、周囲を山に囲まれた理想的な住居を手に入れたと聞いている。掲示板などで平素から親しく交際していた訳ではないが、かねてよりヤマトさんを通じて色々な話をうかがっており、一度は会いたいとずっと願っていた一人だ。
ヤマトさんのお誘いに是非もなく同行をお願いした。
さて、9月中旬とくれば狙いはヒメオオしかない。昨年の同時期ヤマトさんJfKさんとヒメオオ探索に出かけたが空振り(^_^;)  どうやらポイント自体は間違っていなかったようだが、やはり樹液クヌギでの採集とは明らかに勝手が違う。今回はPさんと云う心強い助っ人に登場いただくことになっているので、なんとしてもゲットといきたいものだ(^^) 

ちなみにタケちゃんは自他共に認める?アカアシ好き。60mm代のヒラタをはじめ、ミヤマ・ノコ・コ・ネブト、そしてオオクワの可能性さえあるポイントをいくつも知りながら、あの漆細工のようなアカアシの上品な姿がたまらなく好きで探しているという。
確かにアカアシはスマートで紳士的な印象の、とても格好の良いクワガタだ。決して珍しい種ではなくミヤマ採集の外道的な扱いを受けることも多いが、平地・低山での採集が中心の俺にとってはいざ「アカアシを!」となると意外に確実に仕留めるのが難しい気がする種でもある。もっとも今回は経験豊かなヤマトさんPさんが一緒だ。タケちゃんのためにもヒメオオ&アカアシが見つかるといいなぁ。。。
ぶどう狩りシーズン真っ盛りの3連休と云うことで、道路は大混雑が予想される。タケちゃんとの待ち合わせは11時だ。早朝、東京の東の外れから一路西へ。7時にヤマトさん宅に出向き、Pさん宅を廻ってから現地へと向かった。

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某ポイント

高速に乗るまで多少の渋滞はあったが9時過ぎに待ち合わせ場所に到着できた。おそらくタケちゃんはどこかで仮眠中だろう。ヒメオオをヤナギの樹で見つけやすくなるのはお昼過ぎだと云う事なので、約束の11時まではタケちゃんには運転疲れを解消いただくことにして、それまで周辺の散策をすることにした。
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周辺はかなり手の入った雑木林。ボコボコのクヌギが多い場所だ。夏の間は子供たちのカブトムシ採集の恰好の場所なのだろう。。。
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ここで、ふと「このアリなんだか様子がおかしくないか?」  大きさも形も、どう見てもアリなのだが、なんとなく不恰好だし、単独で葉の表にじっとしている。人の気配に敏感でチョコチョコ動き回るため撮影に苦労したが、拡大してみてようやくわかった。これはアリグモ!拡大写真で足が8本あるのがわかるだろうか?頭部にはいかにもクモらしい単眼と折りたたまれたようなアゴがかろうじて見える。噂には聞いていたが今回初めて確認した。つくづく生き物の世界の不思議を感じさせられる存在だ。
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クヌギの樹皮には色々な虫の痕跡が。。。左は雑木林の樹上で成虫を良く見かけるハラビロカマキリの卵のう。右の毒々しい彩色の毛虫は、おそらく「ツマキシャチホコ」。幼虫の食草は、クヌギやコナラだとのことだ。
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ヤマトさんが呼んで見せてくれた、サシガメの仲間。数十匹の幼虫がクモの子を散らすようにクヌギのウロに隠れた。 雑木林に不釣合いなこの花は「マルバルコウ」
熱帯アメリカ原産のつる性の帰化植物とのことだ。
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雑木林脇の川原にヤナギの群落が見える。今日のお目当てのヒメオオがつく高地性ヤナギとは異なり、低湿地でよく見かける種だ。比較的若い樹ばかりでウロなども少なかったが、こうして昆虫たちに食荒らされて樹液を出すものが多い。
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荒地で見かけることの多い背丈2m近くもあるこの植物は、タケニグサ。茎が中空でタケに似ることから「竹似草」だそうだ。茎を傷つけると黄色っぽい乳状の液を出すが、アルカロイドを含み有毒。皮膚病の薬として利用することもあると云う。
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これはイタドリの雌花。このように赤味を帯びたものをベニイタドリと呼んでいるそうだ。拡大して良く見ると、相撲の軍配のような形をした「さく果」(実)も見えている。
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どこかで見たようでいて、名前を思い出しにくい樹。奇数羽状複葉を持ち、一見するとマメ科やウルシの仲間に見えるが、これはニガキ科の「ニワウルシ」。かぶれることはない。見上げるような大木になる。
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これも似たような葉(奇数羽状複葉)をつける「ヌルデ」。 雑木林ではおなじみの先駆樹(荒廃地に真っ先に飛び込んでくる陽樹)の代表格だ。赤い実には酸味・塩味があり、表面にふく白い粉を舐めると塩辛いことから、古くは「シオノキ」と呼んで塩の代用をしていた地方が多いと云う。虫えいである五倍子(ぶし・ごばいし)からはタンニンが取れるなど、決して派手ではないが里山の人の暮らしと密接に関係するとても有用な樹だ。
そうこうしているうちに、タケちゃんとの待ち合わせの時間がやってきた。出会うのに意外と手間取ったがようやくタケちゃんの乗るジムニーを発見することが出来た。想像よりもずっと若くてスマートな感じの青年だ(^^ゞ 初対面の挨拶を交わした後ヤマトさんの車に乗り込み、いざヒメオオ探索に出発!!
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いたるところに生えている全く同じヤナギだが、何故かヒメオオがつくのは毎回決まった樹だそうだ。「ここから先にはいますよ」と簡単にPさんが云う。苦笑いする俺とヤマトさん。。。去年、目を皿のようにして探し回った、まさに同じ場所ではないか。。。(^_^;)
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これが今回の目的であるヒメオオクワガタのつくヤナギ。林道脇の日当たりの良い斜面のいたるところに生えている。ヒメオオ(のメス)はこの樹の若い枝を自ら傷つけて樹液を出し、吸うのだという。高原の涼しげな青空をバックに黒いクワガタのシルエットを探すという、なんとも不思議な感覚のクワガタ採集だ。
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探索をはじめて5分足らず 「えっ!?あれ? クワガタじゃないの??」双眼鏡を手にしたヤマトさんの声が山中に響いた。駆けつけてみると、おぉっ!!いた!!まさにヒメオオだ!!(^o^)/ 樹液もウロもないヤナギの幹に黒いクワガタがピタリと張り付いている。 
イメージとしてはもっと高い場所の細い枝先に、長い足をからめるようにしてしがみ付いている印象があったのだが、これから樹を登る途中だったのだろうか? 何にせよ、嬉しく記念撮影!
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俺も負けてはいられないと、必死で目を凝らす。。。しかし、双眼鏡でクワガタを探すなんて。。。(^_^;) 
そうこうするうちに、視線の先に何やら黒い影が。。。!? (@_@)?いたぁ〜!!(^O^) みっけた〜〜〜!!(^O^)/
10m先以上も先の、葉の混み入った枝に張り付いた5cm足らずのクワガタがどんな風に見えるのか、ご覧になって下され!!
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発見した林道からはようやく視線が届くだけ。5mの網では到底捕獲は適わないために樹の下までおりて行ってヤマトさんお得意の?木登り作戦をとることにしたが。。。(^_^;)

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頭上10mはあるだろうか?さすがにそこまで登ることはできない。
ヤマトさんが渾身の力を込めて揺する。大風に煽られたよう大きくしなるヤナギの枝先。しかし、がっしりしがみ付いたヒメオオはビクともしない。それどころかますますしっかりとしがみついて身動きひとつしないではないか。。。ノコやミヤマならとうに我々の手の中に納まっているはずだ。。。いったい。。。ヤツらは本当にクワガタなのか?(^^ゞ?
しばらく放置しておいて、再度挑戦したが結果は変わらずだ。。。発見から1時間半が経った午後2時30分、ついに諦めることにした。夕刻まで樹の下で待ち、自分で下りてきたところで捕獲する作戦もあるのだが、もう精も根も尽き果てた(^_^;) 今回はこれくらいで勘弁してやろう。達者で暮らせと、別れを告げた。(^^ゞ
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標高1000mを超える林道沿いには秋の気配が漂っている。真っ赤な実をたわわにつけたズミや、
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黒紫の実を成らせるミズキは水辺に近い場所に多く繁っている。
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足元に独特の形の花を咲かせているのはツリフネソウ。
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猛毒で有名なトリカブトは、烏帽子のような特徴的な形をした、目を見張るほど美しい花を咲かせる。
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先にも取り上げたイタドリが日当たりの良い林道沿いのあたり一面に。これはノーマルな色。 葉も花も、平地で見かけるよりずっと細身のこのアザミは、ホソエノアザミ。アザミは種類が多くて同定が難しい。。。
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これは少し馴染みの薄い「地衣類」の仲間。植物やコケのように見えるが、実際には光合成や窒素同化を担う「ソウ類」と、安定した支持体や水分を供給する「菌類」が共生した共生体だ。南極から熱帯まで地球上のいたるところ、過酷な環境にも耐える。水分のほとんどない溶岩上にも生えることから、乾性遷移の第一段階に出現する生物でもある。一方、大気汚染などにとても敏感なことから、梅の樹皮に張りつく「ウメノキゴケ」は都市部の環境調査の指標植物にもなっている。同定は、これまた自信がないが、左はハナゴケの仲間、右はニセウチキウメノキゴケ?と云うことにしておこう。。。(^_^;)
ヒメオオの採集はとにかく見上げたり目を凝らしたりでくたびれる(^_^;)。 その後いくつかポイントを廻ったが、一応の目標を達成したこともあり、次なる目的のひとつ、アカアシの可能性を求めてヤマトさんの良く知るポイントに移動することにした。ぐっと標高が下がり、いつも見慣れた里山らしい風景の中を進んだ。
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からんだツルから不思議な形の花をぶら下げているのはツルニンジン。根の形が高麗人参に似ていることから付けられた名前だ。 こちらはヤマハギ。標高が下がったとはいえ山梨。千葉の里山よりも秋の訪れは早いようだ。
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何やら美味そうにも見えるが、キノコの同定には要注意!美味なクリタケと猛毒のニガクリタケは素人目には区別が付きにくい。。。 株立ちになった美しい幹肌を見せているリョウブ。春の芽吹きは山菜として天ぷらに。幹は床柱などに利用される。真夏に咲く白い花は昆虫たちが良く集まることでも知られている利用価値の高い樹だ。
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見慣れた光景が目の前に広がり始めた。。。なんだかホッとするなぁ〜 (^_^;) 
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スジクワガタも、これくらいのサイズになると大アゴの内歯に特徴が現れてくる。
(この数枚の写真はレンズに指紋が付いていてぼやけてます<m(__)m>)
残念ながらアカアシには出会えなかったが、小ぶりなミヤマがいてくれた!! 
よかった〜(^O^) 恥ずかしながら、今シーズン2度目3頭目のミヤマ♂の確認だ(^_^;)
050918_118.jpg (22384 バイト) その後、ジムニーを羨ましそうにいじくる?ヤマトさん。タケちゃんはこの他にも軽のジムニーを持っているらしい。小さなボディで抜群の走破力を誇るジムニーは、数多ある車の世界でも独特の、そして不動の地位を保ち続けている。

いつかセカンドカーを持てる身分になったら、
  「ぜ〜たいにジムニーを買ってやる!!」
と、心に誓った(^^ゞ

このあと、美しい月を眺めながら温泉に入って疲れを癒し、ファミリーレストランで食事しながらいつまでも談笑。タケちゃんはヤマトさんから聞いていた通りの自然を愛する、少々骨太な魅力溢れる青年?だった(^^)。
同じカブクワの愛好家といってもその価値観は十人十色だが、彼のそれは共感できるものばかり。正に『仲間』だと感じた。京都への遠征の時も感じたことだが、この年になって新たな知己にめぐり合えるとは何て幸せなことだろう。そんな感慨にふけることのできる貴重な出会いだった。

いつか、俺も香川のポイントへお邪魔させてもらおう!っと〜!!(^O^)/

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