2005/7/10(日)  晴れ

梅雨とは思えない青空が広がった。さすがに暑い。。。ふと思うのはあの谷津田はどうしているだろうか?と云うこと。いつも気に掛けていながら多忙さにかまけ、前回尋ねてからもう3週間近く経ってしまった。今日は少し明るいうちから出かけてみよう。。。

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新規ポイント

明るいうちにフィールドを訪ねたのは、外にも目的があった。カブクワ仲間のマクゴロウさんが子供の頃からお宝の木として採集をしていたと云うタブノキを見たいと思ったからだ。先だっても2本のタブでノコ11匹、ミヤマ3匹、コクワ数匹を採集したと云う!(@_@;)
千葉の南部の山はタブだらけと云って良いほどタブの巨木が多い。もちろん今までに何度も目にしてきた樹種だし、「カブクワの採れる木」だとの話は聞いていた。でも、本気で意識して眺めたことはあまりなかったと云うのが正直なところだ。いっちょ、有望な樹を見つけてやるぞ!!
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、などと鼻息を荒くするまでもなく、いきなり見つかった(^^ゞ これがタブノキの葉。「全縁」と云って周囲にギザギザのない、厚手の艶やかな常緑広葉樹だ。15〜20cmとかなり大型で、葉の中央よりも先端に近い部分で葉の幅が一番広くなる点ではマテバシイに酷似している。しかし、タブは葉を揉んで臭いを嗅ぐと、クスノキ科特有の強い香りがすることなどから容易に見分けることが出来る。
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また、今の時期には赤い柄の先に丸い果実(右の写真の緑色の球。熟すと黒くなるが、その前に落ちてしまうことが多い)をつけることで、よく似たブナ科のシイやカシなどと見分けられる。シイ・カシは、堅果(いわゆるドングリ)を生らせる。
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もうひとつの特徴が、枝の先端に大きな芽を一つ付けること。特に花と葉の入る混芽となった冬芽はツバキの芽と見紛うほど大きな芽となる。シイ・カシ類は、尖った葉芽をいくつかまとめてつける点で大きく異なる。
また春先に花とともに展開する新葉が赤味を帯びる点もタブの大きな特徴の一つだ。

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巨木になると、太い枝をうねるように横に広げて壮大な樹形になる。また葉は枝先に円を描くようにまとまってつくことから、遠方からでもその特徴的な姿が目に止まる。

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大木に覆われた暗い林床ではクヌギやコナラなどの陽樹の苗木は育つことができず、生き残っているのはタブやスダジイ・アカガシなど陰樹の苗木ばかりだ。
こうして一度陰樹の森になると、余程大きな環境の変化や人為的な伐採等がない限り、陰樹の森が続くことになる。
このように構成する樹種が安定して世代交代するようになった究極の森林を「極相林」と呼ぶ。(「原生林」と云う呼び名もほぼ同じ意味と考えてよいだろう。)

原始の森がそうであるように、人の手の入らなくなった雑木林は早晩このような極相林に移り変わってゆく運命にあるのだ。


右はタブノキと並ぶ照陽樹の双璧、スダジイ(ブナ科)。ブナ科の植物にはシイやカシ(スダジイ・マテバシイ・アラカシ・アカガシ・シラカシ・ウバメガシなどなど)と云った常緑樹と、ブナ・コナラ・クヌギ・ミズナラ・カシワ・クリに代表される落葉樹とに分かれる。

堅果(ドングリ)がヒトや野生動物の食用として非常に大切なだけでなく、建築材としても優秀。もちろん薪炭材としてもピカイチだ。

人の生活と切り離すことの出来ない樹々たち。原始からの日本文化を支えてきたのはブナ科の植物たちであった、と云っても決して過言ではないだろう。
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DSCN6882.jpg (30674 バイト) この独特な形の実(上-右)を生らせているのはイスノキ。分布は静岡県以西と云うことなので、ヒトの手により植えられたものなのかも知れない。
このイスノキにアブラムシが寄生してできたコブが木質化し、独特の形状になった「虫えい」(左の写真)を「イスノキエダナガタマフシ」呼ぶ。

写真に見える穴はアブラムシが出てきた跡で、風が吹くと枝の虫こぶが笛のようにヒューヒューと鳴ることから「ヒョンノキ」と云う呼び名もあるようだ。

ちなみに、虫こぶには独自の名前がついているものがある。「(虫が寄生する)植物名」+「(虫こぶの)出来る場所」+「(虫こぶの)形」+「フシ」 の組み合わせだ。この場合「イスノキ」+「エダ(=枝)」+「ナガタマ(=長玉?)」+「フシ」 = 「イスノキエダナガタマフシ」
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ふと気付くと、巣の中心にゴミを集めて身を隠すクモを発見、その名もゴミグモ(^_^;) クモ自体も腹部がトゲトゲとしており、どうやら擬態しているようだ。こんな小さな発見もまた楽しい。。。
今までほぼ素通りしてきた照陽樹だが、案外面白い面もあるようだ。今回は樹液の滲んだタブを見つけることは出来なかったが、今後に期待しよう。

気が付くともう辺りは薄暗くなっている。車中で夕食代わりの魚肉ソーセージの束を頬張りながら車を走らせ、いつもの谷津に向かった。

ポイント0507

横綱と呼ぶには少々憚られると云うことで「小結」と名付けたクヌギ。付近に近づくと懐かしい樹液の臭いを周囲に撒き散らしている。ようやく樹液が本格化し始めたらしい。ライトを消して近づくと、ガサガサ・ゴソゴソ・ブゥ〜ン・ガシッツガシッと、虫たちの立てる音が耳に届く。目・耳・鼻・皮膚、採集には自身の持つ感覚の全てを研ぎ澄ませて臨む必要がある。。。
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見上げると、メクレの下からいい感じで樹液が滲み出ている。まだ少し時間が早いせいか、オオスズメバチが威圧的な羽音で周囲を飛び回る。しばらく待ったが飛び去る気配もないことから、そっと覗かせてもらうことにしよう。
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脚立に乗ると、目の前には小指ほどもあるスズメバチ。メクレの下には大歯のノコ、そして無数のコクワたち。 メクレの裏面、目の高さにある樹液の滲みにはカブトのペアが仲睦まじくデート中(*^_^*)
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?!こりゃ、デカイぞ!もしやヒラタか!? 引き出すと強そうなコクワ47mm。。。(^_^メ)
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ここにもコクワのお尻 このメクレにもコクワ
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ここも、 きっとここも、、、(-_-;)
050710_229.jpg (29329 バイト) この樹には潜行性のクワガタが好んで隠れることの出来るメクレが無数にある。一つ一つ全てを確認するのはかなり困難だったが、少なくともヒラタと思われる影は見当たらなかった。この樹が埼玉にあれば100%ヒラタがつくはずだ。即断は出来ないが、付近に生息している可能性は極めて低いと云う印象を持たざるを得ない。
ただ、複雑に入りくんで、30cmある細い掻き出し棒ですら奥まで届かないようなメクレや、出入り口は狭いが思いの外深い洞などもある。

もう少し観察を続けて見る必要があるだろう。

ポイント0506

小結の健闘に気を良くしながら移動。谷津田に向かった。ここでの報告はただひとつ。

・・・・・デジカメを水路に落した。。。 /(ToT)\

唯一の救いは、咄嗟に抜いたメモリーが生きていたこと。最後の1枚は、↓これでした

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