2005/2/3(木) 快晴

明日は立春、さすがにまだ春という実感は全くないが、それでも暖かな日差しからは確実に春が近づきつつあることを感じることが出来る。こんな季節だからこそ雑木林の命の息吹を探しに行きたいものだ。。。と云うことで、久しぶりに有給休暇をとって千葉の里山散策に出掛けることにした。
地形図を眺めていると、千葉は本当に谷津が多い。昨年までは比較的立ち入りやすい平地林を中心に活動していたのだが、今年は昔ながらの谷津田周辺に拠点を移すことにした。大型の機械が入れないような場所は農作業の効率も悪く、放棄されて荒れた場所が多くなるのは否めないが、それでもきちんと手入れのされた里山風景が残されていることもある。後継者不足でそういった谷津田がなくなってしまう前に、そんな原風景をこの目に焼き付けたいのがひとつ。そしてもし、仮にオオクワなんて大物が生きながらえているとすれば、きっとそんな場所をおいて他にはない、と云うのがもうひとつの理由。
オオクワをこの手に。。。そんな夢を見させてくれるような里山に、いつか巡り合うことができるのだろううか?

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ポイント0504

地形図で、集落から程近く、しかし地形的に開発の手を免れていそうな場所を丹念に探すうちにみつけた場所のひとつをカーナビの目的地に設定し、いざ出撃。
しかし予想に反して目的の谷津田は既に壊滅していた。気を取り直して周囲に捜索の範囲を広げると、東向きの緩斜面にコナラやクヌギの樹冠ののぞく場所を見付けた。
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近づいてみると、笹が2m以上も覆い繁る深いヤブだ。これではいくらクヌギがあっても期待はできない。。。とは云っても、いつもの悲しい性で踏み込んでしまう(^^ゞ

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フジに今にも絞め殺されてしまいそうなクヌギだが、樹液痕のある洞が見える。「あのツルに足を掛ければ。。。」などと覗き込む算段をしてみるが、それほど時間を掛ける樹ではないだろう。次、次! こちらは枝のわきの下(影になっている部分)に洞とメクレが。これもパス。。。
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ようやく下草の刈られた一角を見つけて入り込むと、過去に萌芽更新の繰り返された痕跡をとどめる樹が目立ち始めた。
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。。。(^_^;) なんとも表現しにくいが。。。ちなみに写真の上下はこれで正しい(^^ゞ 左の写真でクヌギを貫通しているフジヅルが、隣のコナラを締め上げている。手入れの行き届いた雑木林では、こうなる前にツルを切ってしまうはずだ。放置されてから長い月日が経ったのだろう。

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今年注目しているアカメガシワがそこかしこに生えている。典型的なパイオニアツリーで放棄された畑に真っ先に飛び込んでくる樹だけに、ヤブに覆われる以前は日当たりの良い場所であったことが類推される。 アカメガシワの大きな特徴は、非常に深い洞を持ち、樹液痕のあるものが多いことだ。オオクワ採集の実績のある樹種でもある。

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洞に潜んでいたのは、巨大な蜘蛛。日溜りに引き出すと、何とも肉感的で筋肉質な8本の足と、いかつい顔つきをしていた。

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そうこうしているうちに、ふとヤブの手前にこのメクレ!思わず「あった〜!」と口にしながら裏側に回りこむと。。。 なんじゃこりゃぁ〜!樹皮メクレだけでなく木質部にも凹凸がボコボコある。

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足元にはヒラタの好みそうなお誂え向きのメクレ。 目の高さにはカブト・ノコが集まりそうな大きく割れた樹皮メクレ。

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そして地上2〜3mはこんな状態。。。 要はこんな樹の全貌。。。こいつはオオクワが潜んでいたっておかしくない!?ヽ(^。^)ノ  さっそく『横綱』と命名した(^^ゞ

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ここで最も気になったのが「この樹、生きてるの?」
でも大丈夫。幹の中ほどからこのような胴吹きの小枝が多数出ていた。まだ生命活動が残されている証拠と云えるだろう
そして根元には昨夏のノコの骸が。。。この樹にカブトとノコだけじゃもったいない。採集者の痕跡もないことから、オオクワが未だ生息しているならばこの樹に入る!と信じつつ、何度も振り返りながら先へ進むことにした。

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周囲はこんな状態。本来の植生であるタブやスダジイなどの陰樹がほとんど見られないことから、比較的最近まで手入れがされていたのだろう。 日当たりが悪くなると、すぐに枯れてしまうツツジの仲間もいまだ健在。

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可憐なウグイスカグラも明るい林床であることを物語ってくれている。 そして、こんな発生源が随所にあるのだから、、、と何を見ても期待は広がる一方だ(^^ゞ

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周囲の谷津田は放棄されてアシの生える湿原に変わっている。 湧き水を集める自然の水路。

ポイント0505

かなり気分を良くして次のポイントに向かう。こちらは、地形図を見る限り先の場所よりももっと期待できる。どんな樹が待っていてくれるのだろう。。。
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こんな昔ながらの風景の広がる里山の奥へ突き進んでゆく。
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在来種のひとつであるシロバナタンポポ。どちらかと云えば西日本に多いと聞く。 崖から湧き出る根垂水(ねだれ)が凍っている。関東地方が最も乾燥するこの時期にあってさえ、けっして涸れることのない水源が、谷津田を支えている。
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そうこうしているうちに見付けたなかなか期待の持てるクヌギ。こりゃ幸先いいぞ!

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傾き始めた冬の日差しに、コナラの純林の梢が彩られている。何か切なささえ感じさせる美しい風景だ。 先程も出てきたアカメガシワ。こんな感じで洞と樹液痕がセットで見られることが多い。

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名もしれぬキノコ これはスギの雄花。もうじき親の仇のように忌み嫌われることになる(^_^;)

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ケヤキの古木は、樹皮がウロコのように剥がれ落ち、その痕は虫が喰ったような独特な模様が描かれる。 ケヤキの梢は非常に細かく枝分れする。また樹形はイチョウの葉を逆さにしたような端正な箒(ほうき)型になるため、非常に繊細で整った樹と云う印象を受ける。

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ケヤキとはうって変わって太くて枝分れの少ない無骨な感じの樹 垂れ下がる実からウルシの仲間であることがわかる。ヤマにはこの種が意外に多く、かぶれには注意が必要だ。

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ヒノキの人工林。下草は少ないが、倒木が非常に多いのが目につく。針葉樹は根の張りが浅いため、広葉樹林に比べて台風などの被害を受けやすい ヒノキ・アスナロ・サワラと、どれも良く似たヒノキの仲間は、葉の裏側の白い「気孔帯」で見分ける。『Y』の字に見えるこれは、「ヒノキ」だ。

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冬の夕暮れは早い。気が付けばもう4時半、すっかり冷え込んできた。後半は道を誤って予定外のヤマに踏み込んでしまうなどして時間をロスしてしまったが、下見の成果としては午前中のあの1本で満足するとしよう。
「昔ながらの手入れの行き届いた里山」と云うよりは、変わりゆく人の暮らしとともにギリギリ保たれている場所ではあったが、素晴らしい好天のもとで満喫した、最高の一日になった。千葉の里山は奥が深い。当面は少しずつそれを紐解いてゆくことになるのだろうと覚悟を決めつつ、快い疲労感とともに帰路についた。

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